平成18年(行ウ)第13号

天草市まちづくり交付金事業差止・違法公金支出返還請求事件

原告 植 村 振 作

 

被告 旧本渡市長 安田公寛 外

 

答 弁 書

 

熊本地方裁判所民事第2部合議B係

平成19

 

 

                    被告ら訴訟代理人弁護士 原 田 信 軒

                                                                                                     

 

第1 請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

第2 請求の原因に対する認否

 1 請求原因1の事実は,静める。

 2 請求原因2の事実は,静める。

まちづくり交付金事業の実施及び職員人件費のため平成17年度一般会計の都市計画費に,まちづくり交付金事業3億4300万円を含む3億5694万4000円の予算を提案し,平成17年3月25日,旧本渡市議会で可決された。

まちづくり交付金事業における平成17年度の支出額は,旧本渡市において人件費1177万2869円を含む2億4320万3813円,合併後の天草市おいて39万62187円,合計2億4360万円であり,平成18年度に9950万円を繰越し,平成18年12月31日現在の支出(債務を含む)額は9635万円である。

3 請求原因3について

(1)「まちづくり交付金事業」承認申請にあたり,~「まちづくり交付金の客観的評価基準の確認シート」を用いて事前評価を実施し,計画の実現可能性に関して,「計画について住民等との問で合意形成がなされている」旨丸印を記載して提出した事実は認める。

(2)住民に「まちづくり交付金事業」計画が知らされたのは平成17年5月1日号「広報はんど」が初めてである旨の主張は,否認する。

  平成17年4月1日号「広報はんど」における平成17年度予算概要の紹介においてお知らせしている。

(3)「まちづくり交付金事業」計画申請時点では,同計画についての住民との間での合意形成の前提要件である同計画の住民周知はなされず,住民説明会もなされなかった,という点については,同計画そのものに対する住民周知,住民説明会がなされていないことは認めるが,同計画に対する住民説明会等が上記評価基準における「住民等との間での合意形成」の前提要件であるという点については,否認ないし争う。

(4)「旧本渡市長安田公寛が,合意形成がなされていない事を承知の上で,~申請したことは,刑法の虚偽公文書作成罪(刑法156条)及び虚偽公文書行使罪(刑法158条)に和当し,違法な手段により認可を受けたIIヨ本渡市本渡北地区「まちづくり交付金事業」への17年度3億4300万円支出は違法な公金支出に相当する」という点については,否認ないし争う。

旧本渡市長安田公寛は,「住民等との問で概ね合意が形成されている,又は形成される見込みが十分ある」との判断に基づき申請しており,虚偽公文書作成及び同行使には該当せず,従ってまた違法な公金支出には当たらない。

4 請求原因4については,原告が監査請求を行い,請求が棄却された事実は,認める。

 被告の主張

  初めに

   原告の本件住民訴訟は、以下のとおり主張自体失当であり、速やかに棄却されるべきである。

  まちづくり交付金事業の経緯について

(1)旧本渡市は平成16年度に,地域再生構想の一環として,地域活性化を目的とした,「日本の宝島天草ほんど活性化計画」を策定し,平成1621日,内閣府地域再生本部から認定を受けた。

策定された地域再生計画は,本渡市中心地域内の歴史や文化,観光施設,商業施設等を有機的に連携させ,①総合的なコミュニティー施設として検討されていた旧ニチイビルの改修事業,②国指定文化財である祇園橋周辺町山口川河川改修整備事業,③旧天草教育会館保存整備事業,④本渡港整備事業、⑤天草切支丹館整備事業,⑥中央商店術アーケード整備事業,⑦昭和橋改修事業,⑧周辺町並み整備事業,⑨映画・テレビ等の誘致事業,⑩各種イベントの実施などを一体的・集中的に実施し,魅力ある市街地を形成するとともに,観光客の誘致や住民の憩いの場を創出し,交流人口の増加により,本渡市中心市街地の活牲化を図る,というものであった。

(2)そして,上記計画を実現するために検討されたのが,平成16年月に創設された国土交通省の総合的支援制度である,「まちづくり交付金制度」の活用であった。

この制度は,地域の歴史・文化・自然環境等の特性を活かした個性あふれるまちづくりを実施し、全国の都市の再生を効率的に推進することにより,地域住民の生活の質の向上と地域経済・社会の活性化を図ることを目的とし,市町村が策定した「都市再生整備計画」に基づき実施される事業の費用に充当するために交付金(まちづくり交付金)を交付するというものであり,都市再生整備計画に位置づけられたまちづくりに必要な幅広い施設等を対象とするとともに市町村の提案に基づく各種調査や社会実験等のソフト事業も一定の範囲内において対象とするものである。

(3)そこで,旧本渡市では,平成16年9月議会に都市再生整備計画作成のための調査費200万円を予算化し,「天草ほんどの歴史や文化を感じるまちづくり」を目標とする「都市再生整備計画本渡中央北地区」を作成し,平成17年3月11日国土交通大臣に提出し,同年3月25日にまちづくり交付金の交付決定を受けた。

この都市再生整備計画は,祇園橋や祇園社,城山公園,天草切支丹館などの歴史や観光資源を生かし,商店街・旧ニチイビル~祇園橋~旧教育会館~城山公園・天草切支丹館の観光ルートを確立し,各施設の整備を行なうとともに,この地域に至る歩道等の高質化や案内板・情報板を設置,回遊性のある市街地を形成し,来街者の利便性の向上と地域の魅力を高め,また,観光ボランティアの育成により交流を促進し,地域の活性化を図るというものである。

そして,まちづくり交付金の交付決定を受け,①天草交流プラザ・仮称(旧ニチイビル)の整備,②天草でんしょう館・仮称(旧教育会館)の整備,③天草切支丹館の整備,④天草でんしょう館・仮称の広場整備,⑤情報板・案内板の設置,⑥城山公園の整備,⑦街路・細街路の整備,⑧城山公園文化財調査,⑨観光ボランティア育成等の計画が実行されることになったものであり、従来、国の支援を受けるのが難しかった観光施設や歩道等の高質化など幅広い施設整備などに支援が受けられることとなった。

まちづくり交付金事業の経過は以下のとおりである。

1)まちづくり交付金活用検討            平成16年 5月~

2)平成17年度まちづくり交付金の概算要望     平成16年 7月21日

3)都市再生整備計画作成調査費 議会・可決     平成16年 9月24日

4)平成18年度まちづくり交付金の本要望      平成16年10月29日

5)「都市再生整備計画」提出(国土交通大臣)    平成17年 3月11日

6)平成17年度予算(当初)議会・可決       平成17年 3月25日

7)まちづくり交付金の交付決定通知         平成17年 3月25日

8)平成17年度まちづくり交付金の内示       平成17年 4月 1日

9)平成17年度施策と予算広報掲載         平成17年 4月 1日

10)平成17年度まちづくり交付金交付申請      平成17年 4月15日

11)平成17年度まちづくり交付金交付決定通知    平成17年 4月25日

12)まちづくり交付金事業の概要広報掲載       平成17年 5月 1日

   「都市再生整備計画」市ホームページ掲載    (平成17年 4月27日)

13)平成18年度まちづくり交付金の概算要望     平成17年 6月 3日

14)まちづくりワークショップ開催案内広報掲載    平成17年 6月15日

15)第1回ワークショップ(72名参加)       平成17年 6月29日

16)まちづくりワークショップ開催案内広報掲載    平成17年 7月15日

17)第2回ワークショップ(17名参加)       平成17年 7月23日

18)第3回ワークショップ(26名参加)       平成17年 8月 3日

19)第4回ワークショップ(29名参加)       平成17年 8月24日

20)第5回ワークショップ(30名参加)       平成17年 9月21日

21)平成17年度まちづくり交付金の内示変更申請   平成17年11月 1日

22)平成18年度まちづくり交付金の本要望      平成17年11月 1日

23)平成17年度まちづくり交付金の内示変更通知   平成17年11月11日

24)平成17年度まちづくり交付金交付決定変更申請  平成17年11月11日

25)平成17年度まちづくり交付金交付決定変更通知  平成17年11月28日

26)まちづくり交付金事業整備計画説明会開催案内広報 平成18年 1月15日

27)    〃      説明会(37名参加)   平成18年 1月25日

28)「都市再生整備計画(第1回変更)」提出     平成18年 2月 1日

29)まちづくり交付金の交付決定通知         平成18年 2月13日

30)平成17年度補正予算(補正5号)議会・可決   平成18年 2月24日

31)平成17年度暫定予算(専決)          平成18年 3月27日

32)平成18年度暫定予算(先決)          平成18年 3月27日

33)平成18年度まちづくり交付金の内示       平成18年 3月31日

34)平成18年度まちづくり交付金交付申請      平成18年 5月11日

35)平成18年度まちづくり交付金交付決定通知    平成18年 5月31日

36)平成18年度予算(当初)議会・可決       平成18年 6月29日

37)平成18年度予算概要市政だより「あまくさ」掲載 平成18年 7月 1日

38)まちづくり交付金事業説明会           平成18年 8月22日

39)まちづくり交付金事業概要掲載          平成18年 9月 1日

3  「都市再生整備計画一本渡中央北地区」策定の経緯について

(1) 都市再生整備計画は,個々の整備に関する地元住民等からの要望や各種会合等における議論,市の総合計画や都市計画マスタープラン,中心市街地活性化基本計画との整合性などこれまで積み重ねた経過を踏まえて策定されたものである。

(2) 旧ニチイビルの整備について。

 ①  旧ニチイビル整備がまちづくり交付金事業の対象になった経緯は,別紙「まちづくり交付金事業申請までの経過(旧ニチイビル)」のとおりである。

 ②  平成13年12月3日に,「本渡のまちづくり推進についての請願」が本渡町区長会会長他9団体の代表者連名で旧本渡市議会に提出され,同請願は同年12月議会で審議され,同月18日に採択された。

請願内容は,「①祇園橋を中心とした町山口川の景観を生かす千人塚・キリシタン館への歴史観光道の整備,②観光港としての本渡港から中心街までの並木通りなどの整備,③南地区での落ち着いた町並みづくり,④古川,川原,山口地区の静かな田園都市づくり,等々広い視野に立った「まちづくり」を進めることが必要であり,そのためには町山口川,元ニチイビル付近を町の核と位置付け,整備を図ることが急務である」というものであった。

 ③  このような請願等もあり,旧本渡市では「これからのまちづくりをどのように推進していくか」の検討が進められた。そして,中心市街地の活性化のため旧ニチイビルを平成14年12月に1900万円で購入し,平成15年1月には同ビルの活用案を募集、同年4月と5月には活用案に関する意見交換会を開催するなどして,活用案の検討が行われた。

また,中心市街地活性化基本計画策定審議会を設置し,委員18名により活性化方策等について4回の審議が行われ,平成16年6月には「もやいの心で,天草発展の核となるまちづくり」を目標とする「本渡市中心市街地活性化基本計画」が策定された。

  なお,旧ニチイビルは,経済産業省の支援を受けて整備を行なう計画であったが,園の三位一体改革のなか,経済産業省の支援が困難となったことから「まちづくり交付金事業」で整備を行なうことになったものである。

(3) 旧教育会館の整備について。

①  旧教育会館の整備がまちづくり交付金事業の対象になった経緯は,別紙「まちづくり交付金事業申請までの経過(旧教育会館)」のとおりである。

②  旧教育会館は,熊本大学工学部北野研究室等の調査で,昭和10年に落成した木造二階建てであり,日本の近代建築物を知る上で貴重な建物」であることが判明した。

そのため旧本渡市教育委員会で,貴重な建物を後世に残すための保存・活用策が検討され,文化財保護委員会で審議,市議会の承認を得た上、平成16年12月に本渡市土地開発公社が土地(敷地)を購入し,建物等については市が寄贈を受けたものである。

なお,旧教育会館については,平成17年9月22日,文化財登録申請がなされ,平成18年3月27目付で登録有形文化財として登録されている。

(4)天草切支丹館の整備について

①  天草切支丹館の整備がまちづくり交付金事業の対象になった経緯は,別紙「まちづくり交付金事業申請までの経過(天草切支丹館)」のとおりである。

②  本渡観光の拠点施設である天草切支丹館は,昭和41年に鉄筋コンクリート造り3階建てで建築され,南蛮文化や天草島原の乱を始めとする天草地域の歴史に関する資料約400点を展示し,天草を代表する観光施設として天草の観光に大きな役割を果たして来た。

入館者は,開館翌年の昭和42年度は103,925人,開館より6年後の昭和47年度にはピークとなる133,350人の来館者があったが,平成11年度は50,084人まで減少し,平成17年度には72,590人の来館者となっているが,伸び悩んでいる状況である。

天草切支丹館は,建築後40年を経過していることもあり,建物屋上からの漏水があり,補修工事がなされていること,展示スペースが狭く,展示物がすし詰め状態で陳列されていること,駐車場の整備の必要性もあること,特に近年においてはバリアフリー化の問題もあり,現在の建物ではこれら問題に対応することは困難であることが指摘され,切支丹館運営委員会等からその改善が強く要望されていた。

 また,①展示スペースのみで企画ある展示が出来ない,(診天草地域の歴史や文化などを学習や研究する場がない,③疲れを癒す場がない,④天草の観光などの情報を収集・発信する場がない等体験・交流,自己啓発などの観光ニーズに対応できていない,という問題点もあった。

(5) これら各種整備及びまちづくり交付金事業に関する旧本渡市議会における質疑応答については,別紙「議会におけるまちづくり事業への質疑一覧」のとおりである。

(6) 以上,少子高齢化や人口の減少が進むなか,地域の特色ある資源を生かし,各種事業を一体的に整備し,魅力ある観光拠点づくりを行い,交流人口の増加による地域の活性化を図る「却市再生整備計画 本渡中央北地区(まちづくり交付金事業)」は,各種提言や請願,審議会や議会等での議論,上位計画等との整合性などを総合的に判断して計画したものであり,その内容については,住民等(本渡市に住んでる人や住民で構成する各種団体、各種審議会など)との間で概ね合意形成ができている,又は形成される見込みが十分あるとの認識のもとで策定されたものである。

4  「まちづくり交付金の客観的評価基準確認シート」の作成について

(1) まちづくり交付金の事前評価は、市町村が都市再生整備計画の作成にあたり実施するもので、都市再生整備計画を提出する際にチェックシートを用いて実施し、その結果を国に提出することとなっている。

事前評価時における客観的評価基準については,

Ⅰ-①一1)まちづくりの目標が都市再生基本方針と適合している。

Ⅰ-①-2)上位計画等と整合性が確保されている。

Ⅱ-④-1)十分な事業の効果が碓認されている。

Ⅲ-⑥-1)計画の具体性など、事業の熟度が高い。

の4項目が義務的条件となっており、本件で問題とされている「Ⅲ-⑥-3)計画について住民等との問で合意が形成されている」を含むその他の項目については、配慮されることが望ましい努力要件とされている。

(2) そして,国土交通省の都市再生計画作成の手引きでは,上記m-⑥-3)に関して,「事業の内容が計画卦作成段階における住民参加等を経て,住民の意見を反映したものになっているなど,その内容について,住民等との問で概ね合意が形成されている,又は形成される見込みが十分ある(合意形成)。」との指針を示しているだけであり,どのような要件を満たせば住民との合意形成があるかという具体的評価基準は示されていない。

(3) 以上,「Ⅲ-⑥-3)計画について住民等との問で合意が形成されている」という項目は,努力要件であり,また住民周知や住民説明会等が開催されたこと等を具体的に要求しているものでもない。

(4) そして,「都市再生整備計画本渡中央北地区(まちづくり交付金事業)」は,前述した策定の経緯から,住民等(本渡市に住んでる人や住民で構成する各種団体、各種審議会など)との問で概ね合意形成がなされている又は形成される見込みが十分ある計画内容であり,担当者及び旧本渡市長も剛叢の認識のもとに,Ⅲ-⑥-3)の「計画についで住民等との関で合意が形成されている」旨○印を記して回に提出したものであり,何ら違法とは言えない。

5  以上,旧本渡市長安田公寛は,違法な手段により「まちづくり交付金事業」の交付決定を受けたものではなく,従ってまた「まちづくり交付金事業」への公金支出も何ら違法ではない。そして,正当に事業を引き継いだ天草市長安田公寛が「まちづくり交付金事業」の執行を停止すべき理由は何ら存しない。

 

             証  拠  方  法

1 乙1号証    地域再生計画認定申請書

2 乙2号証    内閣府地域再生計画認定書

3 乙3号証    まちづくり交付金ハンドブック(抜粋)

4 乙4号証    都市再生整備計画本渡中央北地区

5 乙5号証    本渡中央北地区まちづくり交付金事業(広報・説明会開催記録)

6 乙6号証    まちづくりワークショップ(まちづくり交付金事業)

7 乙7号証の1  請願書採択送付書

8 乙7号証の2  請願書(平成13年12月)

9 乙7号証の3  本渡市議会議事録

10 乙8号証    本渡市中心市街地活牲化基本計画

11乙9号証     天草教育会館・天草図書館調査報告書

12 乙10号証   文化財登録原簿への登録手続申請書等

13 乙11号証    登録有形文化財登録通知書等

14 乙12号証    本漉市議会議事録(平成14年6月,平成15年6月)

15 乙13号証    天輩切支丹館運営委員会,振興会理事会会議録

16 乙14号証    天草切支丹鮒についての提言(平成12年12月頃)

附 属 書 類 

1 乙1号証の写し            各1通

2 訴訟委任状               1適


(おことわり)
文中の文字赤及び下線は追記しました

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