天草市長選は当初、現職の安田公寛氏(60歳)の無投票再選かと思われていたが、3月12日までにすでに3人目が出馬を表明した。
安田氏が知名度で有利とはいえ、2市8町が合併し天草市誕生後、島の経済が低迷し、さらに島外への人口流失に歯止めがかからない状況は、決して市民が望む政策運営とはいえない。
自民党政権から民主党へ政権交代したように、リーダー交代を望む市民の声は多い。
安田氏は10年前、旧本渡市長選に初めて立候補。
久々山義人旧本渡市長が勇退後、新人安田氏と江浦政巳氏(旧本渡市議)との一騎打ちだった。
安田氏は干潟を埋めて港を造る本渡マリンタウン計画に反対するマニフェストを掲げた。
ミニ集会を各地区で開き、実家である明徳寺の檀家組織を中心に票を集め、見事初当選を果たした。
実はその時、私は安田氏を支持していた。
錦戸宏館長が亡くなり、存亡の危機にあった「天草郷土資料館」(旧本渡市)で、安田氏のミニ集会を開いて応援した。
プロフィールの書かれたリーフレットなども配った。
就任後市長に、貴重なキリシタン資料を多く所蔵する同資料館の活用や、インターネット放送局の構想を企画したり、ソフトバンク(孫正義社長)が市の学校や公共施設を無償でインターネット接続し、するブロードバンドソリューションを提案した。
島全体がIP電話になり、無料通話ができて、インターネット接続料も5年間無料という画期的な企画だった。
10年後、その結果はどうなったか。
「天草郷土資料館」は市から援助もなく、間もなく閉館、貴重な天草のキリシタン資料は県外へ散逸してしまった。
インターネット放送局の構想は、市からの動きはなく結局、私個人が開局して「天草テレビ」が誕生した。
その時、亡くなった館長の奥さんは私に「人を頼ってはだめ」という経験に基づいたアドバイスをしてくれた。
ソフトバンクが提案したブロードバンドソリューションはどうなったか?
当時、NTTのISDNに対し、ソフトバンクはADSLで、安くて高速なブロードバンドサービスを提供した。その結果、国内にブロードバンドを爆発的に普及させる貢献をした。
天草市の場合はどうか?
市がなんと19億円もかけて無駄な光ファイバー網を自前で引いてしまった。
NTT局舎間はどんな小さな町の局舎まで全て光ファイバー網で結ばれているにも係わらずである。
つまり二重に引いたことになるのだ。
それにも係わらず、今だブロードバンド化されてない地域が多く、問題となっている。
当時、市の幹部は「やっぱりNTTでないとダメ」という話しだった。
市民にはソフトバンクのように「タダ」でサービスが提供できても、業者が儲からないとダメということか。
ソフトバンクの説明によれば、NTTがダークファイバーを解放しないため、天草市内でのサービスは提供できないという。
驚くことに天草市内では今だ、YahooBBが利用できないでいる。
市民不在の公共事業そのものだ。
そして市が敷設した光ファイバー網には19億円で止まるところを知らず、追加予算でどんどん税金をつぎ込んでいる。
そこには業者と政治家が利権に絡む噂が絶えない。
では安田氏の支持基盤である檀家はどうか?
明徳寺の檀家総代であった木山惟彦さんは選挙運動の中心的な存在でもあった。
しかし合併後、「天草切支丹館」を市民らが反対するにもかかわらず解体、新築し、木山家ゆかりの霊場でもある本戸城跡を粉々に破壊してしまった。
その惨状を見た木山さんは「ひどいことをするものだ。言葉もない、、。」と絶句した。
明徳寺の住職で安田氏の実兄もさすがにこれには反対の立場だった。
伝統や文化を簡単に破壊し、市民をないがしろにする市長だと知った今、安田氏を二度と支持するだろうか?
自然破壊につながるとして「本渡マリンタウン計画」に反対し、初当選を果たした、かつての高邁な理想に燃える市長の姿はもうない。
それどころか票につながるとされる業者の利権に絡む大型の公共事業を次々に行っている。
切支丹館建設などに23億円。光ファイバー網敷設に19億円。本渡統合中学校建設に30億円。路木ダム総工費90億円などなど。
今後も天草広域連合で焼却場建設に100億円、中央消防署新築に13億円、さらに市庁舎新築も計画されているという。
さすがに広域連合に関しては、お隣の苓北町や上天草市からも、自治体の規模に応じた負担が発生するため、各首長も悲鳴をあげている。
故福島譲二元熊本県知事同様、過剰なハコもの建設を続けて行けば、財政破綻の道をたどることになる。
同氏は建設業者との癒着問題や事件の発覚を恐れて自殺したとの噂が今も絶えない。
旧本渡市議の一人は「亡くなった福島氏の姿に安田氏が重なって見える」と話す。
天草の将来に失望し、島を去った人はすでに5,000人を超えた。
今年行われる国勢調査ではさらにこの数字を上回るだろう。
「市政をよくする天草市民の会」副代表の小川浩治さん(67歳)は「天草の場合、5,000人というと、旧町一つ分が消滅したのと同じ」といい、危機感を募らせる。
安田氏の無投票再選だけは阻止したいとの思いで先月23日、市長選に出馬を表明した。
市民が安心して暮らし、希望が持てる島作りをやってくれるのは、果たしてどの候補者だろうか。 |