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マツタケ
    写真上は天草産「春マツタケ」(2023年5月2日撮影)
         
サンプル   2回目サンプル   吉田さん
DNA抽出した天草産の根っ子部分(石付)   全体ゲノムの解析を行う予定の天草産の春マツタケ   協力者の生肉青果店の吉田律子さん
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マツタケのゲノムを完全解読!
"夢"の人工栽培へ期待
天草産「春マツタケ」もDNA解析
かずさDNA研究所・東京大大学院農学生命科学研究科が共同研究で発表


かずさDNA研究所(千葉県木更津市)(註1)東京大大学院農学生命科学研究科(東京)は共同でマツタケのゲノム(*1)の完全解読に成功したと2023年5月8日、発表した。
高級食材として人気のマツタケは近年、環境悪化などで収穫量が減少しているが、遺伝子解析によりこれまで不可能だった"夢"の人工栽培や大量生産への道が開かれると期待される。
また担当した国立科学博物館の黒河内寛之氏(註2)は熊本県天草市の本渡青果市場に毎年3月末から4月初旬にかけて初出荷され、1キロあたり100万円の値が付き、希少価値が高い天草産「春マツタケ」もDNA解析を行っており、さらに生態研究が進み、保全に活用されると夢を膨らませる。

発表によるとマツタケのゲノムは、データベース上に4種類が登録されているが、どれも不完全で、多くの断片に分かれており、染色体(*2)が何本あるかも不明で、研究の現場ではその情報が充分に活かされていなかった。
マツタケのゲノム上には、MarY1と呼ばれる比較的大きい(~6,000塩基対)レトロトランスポゾン(*3)が多数存在しており、従来法ではDNA断片を染色体レベルにつなげることが困難だった。

最近、ロングリード配列解析装置(*4)などゲノム解析技術の精度が上がってきたことから今回、新たに長野県伊那市産のマツタケのゲノム解読に取り組み、マツタケがもつ13本の染色体の塩基配列(合計1.6億塩基対)と、ミトコンドリアの環状DNA(7.6万塩基対)を端から端までひとつづきで決定することに初めて成功した。
そして、マツタケが21,887個の遺伝子をもつこと、ゲノムの71.6%は転移因子などのリピート配列(*5)が占めることを明らかにし、研究成果は英国のオックスフォード大学出版局の国際学術雑誌「DNA Research」で2023年4月25日からインターネットのサイトで公開されている。(註3)

また黒河内氏は2019年4月13日、天草市の本渡青果市場に初出荷された長さ13センチの根っ子部分(石付)で直径26ミリ、高さ12ミリ(写真)からDNA抽出を試み、菌類の"種"の同定を行うため、長野県産のマツタケとDNAの塩基配列を比較した。
その結果、一般的に用いる約700bpの塩基配列の1ヶ所を比較して、全て一致していることが分かった。
マツタケの旬は秋だが、地域によっては「早松」(さまつ)やマツタケもどきなどと呼ばれて季節外れに生えてくるものもあり、種類が違うのではないかともいわれていたが、天草産の春マツタケは発生時期が異なるだけで、長野県産のマツタケなどと同じ種であることが分かった。

さらに同年5月2日、2度目に出荷されたもののうち1本をすでにサンプルとして購入。今後、全体ゲノムの解析を行う予定だ。
黒河内氏は「マツタケは北海道から九州まで広く分布しているが、遺伝領域の解析によると、地域ごとに若干の差がある。天草の春マツタケは他と違って、だいぶ早い時期に発生するようだ。
それが遺伝子レベルによるものなのか、特徴の一端がみられるのではないかと考え、ヒントをくれると期待している。
今後、ヒトゲノムのようなモデル生物のようにデータベースが作れるかもしれない」と期待を寄せている。

培地(菌床)からマツタケを発生させる研究を行なっている近畿大農学部の白坂憲章教授(応用生命科学)は「マツタケのDNA解析が進むと、マツタケの育ちやすい環境やきのこを発生させやすい条件、さらに人工栽培の助けになる情報も得られるようになるかもしれない」と期待する。

また東北大大学院農学研究科の陶山(すやま)佳久教授(森林分子生態学)は「同じ種の中にも自然環境で地域によって遺伝的に異なることがよくある。
DNAの解析で種全体の遺伝的な特徴を比べれば天草の春マツタケの遺伝的な位置付けをすることができる。もしかしたら他の地域のものと遺伝的に特別に変わったタイプのものか、それほど変わらない系統なのかもしれも知れない。またどれくらいの多様性があるのか、様々なタイプのものがあるのか、遺伝的に非常に似たものしかないのか、ということもわかる。
また最新の技術でどれくらいの個体数で存在しているのか、過去に交配集団の数がどのように変わってきたのか、他の地域のものと遺伝的に異なっているとしたら、いつくらいに分かれたものなど推定できるだろう」としている。
(金子寛昭)
(2023/5/8)

◎註:
(註1)かずさDNA研究所(千葉県木更津市)
https://www.kazusa.or.jp/

(註2)東京大学大学院農学生命科学研究科の黒河内寛之助教(森林科学)=当時。4月から国立科学博物館植物研究部の黒河内寛之氏(協力研究員)

(註3)英国のオックスフォード大学出版局の国際学術雑誌「DNA Research」論文タイトル: Telomere-to-telomere genome assembly of matsutake (Tricholoma matsutake). https://doi.org/10.1093/dnares/dsad006

◎用語解説(プレスリリースより)
*1 ゲノム:生物をその生物たらしめるのに必須な最小限の染色体のひとまとまり、またはDNA全体のこと。

*2 染色体:細く長い DNA を保護し、細胞増殖時には効率良く複製と分配を行うための構造体のこと。ヒトでは、染色体は1つの細胞に23対46本ある。すべてのゲノムを解読することができれば、読み取り断片をつなぎ合わせてできる連続した配列(スキャフォールド)は染色体数と同じになる。

*3レトロトランスポゾン:「転移因子(トランスポゾン)」のうち、RNAに転写されたのちに逆転写されてゲノム上の位置を転移することのできるものを指す。レトロトランスポゾンは元の遺伝子を残しながらコピーが他の場所に入り込むため、ゲノム中に蓄積していく。


*4 ロングリード配列解析装置:DNA配列を一度に長く解析するための装置。次世代型の配列解析装置では、約200塩基の配列を数百万サンプル同時に解読するのに対し、ロングリード技術は、1万塩基以上の長い配列を連続して読み取ることができる。そのため、繰り返し配列が多い、似た配列があるなど、複雑なゲノム構造をもつ生物の配列を解読するのに適している。
本解析で使用したロングリード技術は、マツタケ以外の多くのキノコ類(菌類)においても染色体の塩基配列を端から端までひとつづきで決定するための新規ゲノム解析技術となることが期待される。

*5 リピート配列(反復配列):ゲノム上で特定の塩基配列が繰返し出現することをいう。短いパターンが何度も繰り返されるものや、転移因子(トランスポゾン)など、様々なタイプがある。

 
     
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